『ラボでも事務所でも、周囲の目を気にせず、静かに快適に分析をしたい!』
『面倒な油漏れ・逆流対策を気にせず、ひたすら研究に没頭したい!』
そのような思いを抱いたことはありませんか?
アルバックでは、分析業界におけるこれらの問題を解決するとともに、お客様の生産性向上に寄与できる製品の開発に取り組んできました。
今回は、そんな分析業界向けのお悩みを解決する、新型油回転真空ポンプGv135 の開発に携わった開発者2名に
開発に至った経緯から、製品を導入した場合のメリット、分析業界のお客様への想いを語ってもらいました。
アルバック機工株式会社 開発本部 開発1部 鈴木 |
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アルバック機工株式会社 開発本部 開発1部 山崎 |
※聴き手:株式会社アルバック コンポーネント事業本部 荒木
目次
製品概要・開発の経緯
製品コンセプトと特長について
―「業界最高クラスの静音性」×「油漏れ対策・油の逆流対策」という掛け合わせに独自性を感じるのですが、なぜこれらを実現しようとしたのでしょうか。一言でいうと、これらの両立が、コンセプトである『分析業務の生産性向上』のカギとなると考えたからです。 真空ポンプはコモディティ化が進んでいて、製品の性能も品質も大差がなくなってきています。そんな市場の中で独自の価値を見出すために、お客様が何に困っているのか、どんなニーズがあるのか、徹底的に調査しました。 この調査の結果、従来製品以上の静音性と、油漏れ・油の逆流対策への要望が多く見られたことから、これら機能の両立が開発の最重要課題と考えました。 |
ー他社の製品も含めて、すでに静音性をアピールした真空ポンプはありますが、従来製品の静音性にユーザーは満足していなかったということでしょうか。
そのように考えました。
最近では、事務所内に分析装置を設置してお使いになるお客様も増えているようで、分析装置に組み込まれた真空ポンプの運転音が事務所内に響いてしまうという声もありました。設置環境の変化から見ても、従来製品の静音性では変化するお客様のニーズに対応できていないと考えました。
研究機関の調査によると、数字の計算のような思考を伴う作業において、無意味な機械音のわずかな音量の変化でも、思考作業に影響を与えるという結果が出ています。従来製品を超える圧倒的な静音性が実現できれば、『分析業務の生産性向上』に貢献できると考えました。
Gv135の導入メリット
ー油漏れ対策や油の逆流対策がもたらす効果についてはどうでしょうか。
先ほど話したように分析装置は事務所内に設置されることも多いので、油漏れによる床の清掃や漏れた油の処理をしなくて済むようになれば、お客様が本来の分析業務に注力できるようになります。
また、分析装置には高価な部品が数多く搭載されているので、真空ポンプ内の油が装置の中に逆流しなくなれば、故障による部品の交換をしなくて済むようになり、費用面でも効果が得られます。
ー数デシベルというわずかな違いで静音性はそれほど大きく変わるのでしょうか。
音の大きさをデシベルで表すことがよくありますが、これは音圧レベルを意味します。
「音の大きさ」は音質や周波数帯でも印象が変わるので一概には言えませんが、6dB下がると音圧レベルは約半分になります。
従来の真空ポンプは約50dBくらいでしたが、Gv135は約45dBです。
50dBというのは、静かな事務所内くらいの環境音といわれておりますので、Gv135の運転音はそれよりはるかに静かだということになります。
卓上でGv135を起動したところ、わずか十数秒で運転音がわずかに聴こえるレベルまで静かになった。
アイデアを形にする難しさ
ー製品化する上で苦労した点を教えてください
『圧倒的な静音性』と『油漏れ対策・油の逆流対策』を、最適なバランスで両立させるために、数多くのパターンの内部部品を製作し、何度もトライ&エラーを繰り返さなければならなかった点に最も苦労しました。 スペックはとりあえず実装すれば良いというものではなく、『最終製品である分析装置のユーザー様が快適に分析業務に取り組める』レベルまで落とし込めていなければならないので、部品試作の段階から、最適なバランスを探るのに苦労し、関係部門に何度も部品の再製作をお願いすることになり、かなりご迷惑をおかけしました。 また、マグネットカップリングでも苦労しました。マグネットカップリングの組み立ては、強い磁力によって引っ張られるので、組み立てをする際はとても危険です。 生産技術部門にも協力を仰ぎ、磁力が影響するポンプ部分とモータ部分の合体する際の治具を作ってもらったので、安全かつ効率的に組み立てられるようになりました。 油回転真空ポンプは他の真空ポンプに比べて部品点数が多く、部品の見積や手配が大変で、これに円安も重なって部品の納期管理や原価管理にもかなり手間取りました。 |
ーコンセプト・設計を一新する大掛かりな開発プロジェクトとのことで、困難な点も多かったのではないかと思いますが、全体を振り返ってみていかがでしたか。
実は私にとって、油回転真空ポンプを一から開発するのは初めてのことで、しかも新しい管理システムの導入も重なって、新しいことだらけの挑戦でした。
それでも真空ポンプ開発の大先輩をはじめ、多くの部門や仲間たちと『お客様に喜んで頂ける製品を届けたい』という想いを共有しながら、この開発プロジェクトに取り組めたことで、何とか製品化することができたと思います。