いまさら聞けない真空の基礎知識
真空と元素
世の中にあるすべては元素でできています。その元素は「真空技術」の総合利用によって、さまざまな製品を生み出しています。真空教室の講師を務める 真空ひばり(まそらひばり)が元素118の中から気になる元素と真空の関わりを紹介します!
こんにちは!真空ひばりです。 真空で何が出来るのか もし、ある空間にどんなガスが潜んでいるのかを確認したいならガス分析計を |
元素周期表
1.水素 hydrogen
気体/1.008/融点:-259.16℃/沸点:-252.879℃/非金属/天然
宇宙に最も多く存在している元素。元素の中でも原子量が小さく一番軽い気体で、大気中で火を近づけると爆発する。ロケットを飛ばす際に使用しており、昔は風船の中身に使用されていた。水を構成する元素の一つでもある。
2. ヘリウム helium
気体/4.003/融点:-/沸点:-268.928℃/非金属/天然
水素に次いで、宇宙で二番目に多く存在している元素。その沸点は全ての元素の中で最も低く、約-269℃。空気よりも軽く、風船や飛行船に使用されている。他の元素と化合しづらい元素。
ヘリウムは、あらゆる機械・機器の製造現場において漏れ箇所の特定や気密検査に活用されています。ヘリウムを使用した漏れ試験は、数多くある漏れ試験方法の中で「小さな漏れ」を「短時間」で試験できる手法として、真空製造には切っても切り離せない相棒といってもいいでしょう。この漏れ試験で使用される工業用ヘリウムは、2022年の様々な情勢により供給不足が続くと言われ、それに代わって水素の漏れ試験も注目されています。 >>>関連ページ「世界的なヘリウム供給不足!漏れ試験はどうなる? ...」 |
6. 炭素 carbon
固体/12.01/融点:4489℃89 (10.3MPa)/沸点:3825℃ (昇華)/非金属/天然
融点や昇華を起こす温度が、全元素中で最も高い。ダイヤモンド・黒鉛・無定型炭素として、安定に存在する。鉛筆の芯は黒鉛と粘土で出来ている。ちなみに、人体の乾燥重量の2/3も炭素で出来ており、とても身近な元素である。
宇宙での存在比は水素、ヘリウム、酸素に次いで多いのが炭素。 この炭素は太陽や恒星、彗星のなかにも豊富に存在し、さまざまな惑星の大気にも含まれていることがわかっています。 |
7. 窒素 nitrogen
気体/14.01/融点:-210.0℃/沸点:-195.795℃/非金属/天然
空気の成分中、約78%を占めている。植物にとっては肥料の三要素の一つでもあり、特に葉を大きくする作用に長けている。生物にとっては必須元素でもあり、あらゆるところに含まれている。
空気中に一番多く存在する窒素。 |
8. 酸素 oxygen
気体/16.00/融点:-218.79℃/沸点:-182.962℃/非金属/天然
空気の成分中、約21%を占めており、地球上に質量が最も多く存在している。オゾンを構成している元素も酸素である。人間が生きていく上で、欠かせない元素の一つとなっている。
圧力を下げて高真空にするほど、空気(酸素)が減少します。 こんなことに利用されています! |
9. フッ素 fluorine
気体/19.00/融点:-219.67℃/沸点:-188.11℃/非金属/天然
淡黄色で刺激臭のある気体、非常に強い酸化作用があり、猛毒である。そのため単体ではあまり使用されないが、化合物は、焦げ付きにくいフライパンや歯磨き粉、虫歯予防などに使用されている。
フッ素は、薄膜液晶テレビの製造でも使われます。液晶テレビの製造は、ガラス基板に成膜した膜をベタ付けしてから必要な配線を残すという形で行います。その膜を、真空状態でおこなうドライエッチングで、膜と反応しやすい塩素やフッ素が含まれているガスを封じ込めて放電させて、発生したフッ素や塩素で材料を削り取っています。 |
13. アルミニウム aluminium
固体/26.98/融点:660.323℃/沸点:2519℃/金属/天然
軟らかく、く伸びる金属。一円玉やアルミホイル、建築、飛行機、指紋の検出、と幅広い分野で使用されている。融点が低く再生しやすいため、「リサイクルの優等生」や「リサイクルの王様」と表現されることがある。
CDやDVDは、レーザー光を当てることによって情報を記録し、レーザー光の反射を読み取ることで再生できます。このレーザー光を安定して反射するためにアルミニウムの薄膜が塗布されています。アルミの成膜には蒸着法、スパッタリング法といった真空薄膜加工技術が用いられています。 |
14. シリコン(ケイ素) silicon
固体/28.09/融点:1414℃/沸点:3265℃/半金属/天然
ガラスや水晶を作り上げている元素の一つであり、地球の主要な構成元素の一つでもある。高純度シリコンは電気伝導性を自由に調整できるため、パソコンなどの半導体に使用されている。
真空蒸着により薄く、結晶性の良い膜が得られるため、様々は集積回路に使用されています。 |
17. 塩素 chlorine
気体/35.45/融点:-101.5℃/沸点:-34.04℃/非金属/天然
常温で黄緑色の、刺激臭のある気体。非常に反応性が高い。強力な殺菌作用がるため、消毒剤や漂白剤に使用されており、身近な例だと水道水やプールの殺菌に使用されている。
塩素は、薄膜液晶テレビの製造でも使われます。液晶テレビの製造は、ガラス基板に成膜した膜をベタ付けしてから必要な配線を残すという形で行います。その膜を、真空状態でおこなうドライエッチングで、膜と反応しやすい塩素やフッ素が含まれているガスを封じ込めて放電させて、発生したフッ素や塩素で材料を削り取っています。 |
18. アルゴン argon
気体/39.95/融点:-189.34℃/沸点:-185.848℃/非金属/天然
窒素、酸素に次いで、空気中で3番目に多い。他の元素と反応せず、化合物を作らない不活性ガス。電球や蛍光灯に封入されて使用されている。アーク溶接のプラズマ生成源やその保護ガス、分析化学などでも使用されている。
空気中に存在する気体のベスト3は、N2:約78%、O2:約21%、Ar/約0.9% |
22. チタン titanium
固体/47.87/融点:1670℃/沸点:3287℃/金属/天然
鉄より軽く、強度があり、耐食性にも優れている。ゴルフクラブや眼鏡のフレームに使用されている。イオン化しにくいため、金属アレルギーを引き起こしにくく、ピアスなどのアクセサリーの材料としても利用されている。
チタンは、ひげ剃りの刃の表面コーティングにも利用されている真空内での硬質皮膜処理されています。 |
26. 鉄 iron
固体/55.85/融点:1538℃/沸点:2861℃/金属/天然
最も良く知られている金属で、血液中にも含まれている。通常「鉄」と呼ばれるものは、2%炭素やマンガンがふくまれている。湿った空気中では簡単にサビてしまい、黒ずんだり褐色になってしまう。
27. コバルト cobalt
固体/58.93/融点:1495℃/沸点:2927℃/金属/天然
コバルトブルーとして着色料では有名だが、コバルト単体は金属色。ハードディスクの磁気ヘッド磁性体としても使用されている。充血を抑える目薬にも含まれる。
28. ニッケル nickel
固体/58.69/融点:1455℃/沸点:2913℃/金属/天然
銅にニッケルを混ぜ合わせた「白銅」は、日本の硬貨である50円玉や100円玉に使用されている。「ニッケル水素乾電池」はハイブリッドカー等に利用されている。
Fe、Co、Neは、スパッタリングターゲット材料として、磁気に記録させる、昭和の記憶媒体の主流であったカセットテープやビデオテープといった磁気テープに使用されていました。 |
29. 銅 copper
固体/63.55/融点:1084.62℃/沸点:2560℃/金属/天然
10円玉の95%は銅で出来ている。電気や熱を良く通す金属で、半導体の配線にも使用されている。人体の中にも存在し、ココアやチョコレートにも含まれている。自由の女神像も、主に銅で出来ている。
超高真空用のフランジとしてICFフランジと言うものがあります。これは、メタルシールフランジで、現在知られている超高真空用フランジの中でも最も信頼性の高く、取扱も容易と言われています。そのフランジ専用のガスケットとして、材質に銅が使用されております。 |
47. 銀 silver
気体/107.9/融点:961.78℃/沸点:2162℃/金属/天然
高い殺菌能力がある金属。銀は古くから裕福階級などで食器として利用されているが、その理由の一つとして、硫黄化合物やヒ素化合物などの毒が混入していた場合、化学変化による変色で有毒物の混入が分かるから、という説がある。
蒸着材料にも使われます。抗菌や防カビ用として、外/内装材、車両塗装などにも使用されています。 |
60. ネオジム neodymium
固体/144.2/融点:1016℃/沸点:3074℃/金属/天然
ネオジムのメジャーな活用法としては、鉄やホウ素を混ぜ合わせた強力な永久磁石、「ネオジム磁石」である。ネオジム磁石は、高性能のモーターやスピーカーなど、幅広い分野で使用されている。
ハイブリットカーに使用されているモーターには、軽量化・高出力化を実現するネオジウム磁石が使われていますが、その製造は、真空溶解炉や連続式水素処理炉、真空焼結炉などで行われます。 |
83. Bi ビスマス bismuth
光学ディスクのコンピュータメモリにも使用され、真空蒸着やスパッタリングで塗布されます。 |