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#01 エアコンの仕組み
アルバックグループは、真空装置・真空機器・材料・分析機器・カスタマーソリューションなどの多様な真空技術を、総合的に幅広い業界向けに提供するユニークな企業グループです。
ーーとは言うものの「多様な真空技術とはどんなもの?」「幅広い業界のどこで使用されているの?」と疑問を持たれたこともあるのではないでしょうか。
実はこんな身近なところに!?と驚かれることもしばしばな真空技術。
いまや一年を通して私たちの生活に欠かせない一般家庭用エアーコンディショナー(通称エアコン)に真空技術が密接にかかわっていること、ご存知ですか?
エアコンから冷たい空気が出るナゾ
一般家庭用エアーコンディショナー(通称:エアコン)は私たちの生活に欠かせないものとなりました。
日本国内では2018年には981万台の出荷台数を記録。また、普及台数は2000年以来毎年上昇を続け、世帯当たり1.2台を突破しました。
光熱費に相当する世帯当たりの電気消費量においては、テレビに次いて4番目の7.4%を占めています。エアコン製造各社が省エネルギー(以下、省エネ)技術を競っているのも頷けます(*1)。
エアコンのタネ明かし、3つの謎
ところで、どうしてエアコンから冷えた空気や温かい空気が出てくるのかご存知でしょうか?
実は、エアコンは熱や物質の現象を利用して、空気の温度を調整しているのです。
- 熱は温度の高いものから温度の低いものに移動する
- 気体を圧縮すると温度が上がり(断熱圧縮)、気体を膨張させると温度が下がる(断熱膨張)
- 液体が気体になると熱を吸収する(気化熱)、気体が液体になると熱を放出する(凝縮熱)
冷たい空気が出る仕組み
エアコンは大きく室内機と室外機の2つのユニットに分かれています。室内機の中には空気の熱を冷媒に移す、あるいは、冷媒の熱を空気に移す為の熱交換器が入っています。
一方、室外機には熱交換器の他に圧縮機と膨張弁、そして、冷媒の流れる方向を制御する四方弁が入っています。そして、室内機と室外機を繋げるパイプの中には、冷媒と呼ばれる熱を運ぶための液体が入っています。
冷媒の移動経路を辿って冷たい空気が出る仕組みを見てみましょう。
室内機の熱交換器をから出た冷媒は低温・低圧の気体です。冷媒は室外機に移動し、圧縮機によって高温・高圧の気体になります。これが、断熱圧縮です。
冷媒は熱交換器でファンによって冷やされ高温・高圧の液体になり、凝縮熱として放出されます。
熱交換器を出た高温・高圧の液体の冷媒は膨張弁によって低温・低圧の液体になります。これが、断熱膨張と呼ばれる現象です。
低温・低圧になった液体の冷媒はパイプを通じては室内機の熱交換器に移動し、熱交換器によって、気化熱として室内の空気から熱を奪い、冷媒は低温・低圧の気体になります。熱を奪われた空気、すなわち冷たい風が室内機から出てきます。
- 室内機の熱交換器から低温・低圧の気体の冷媒が室外機に移動
- 低温・低圧の気体の冷媒は圧縮機によって、高温高圧の気体の冷媒になる(断熱圧縮)
- 高温・高圧の気体の冷媒は室外機のファンによって冷やされ、高温高圧の液体の冷媒になる(凝縮熱)
- 高温・高圧の液体の冷媒は膨張弁によって、低温低圧の液体の冷媒になる(断熱膨張)
- 低温・低圧の液体の冷媒は室外機から室内機に移動
- 低温・低圧の液体の冷媒は室内機の熱交換器で、低温低圧の気体になる(気化熱)
室外機から温かい空気がでてくるのは③の凝縮熱がファンから排出されるためです。室内機から冷たい空気が出てくるのは⑥の気化熱によって冷媒が空気から熱を奪う為です。
エアコンは冷媒の「液体が気体になると熱を吸収する」、「気体を圧縮し、液体になると温度が上がる」、「気体が液体になると熱を放出する」、「液体が膨張し、気体になると温度が下がる」という原理を用いています。これが空気を冷やす、冷房の原理です。
四方弁を切り替えて、冷媒の流れる方向を逆にすると暖房になります。
冷媒の「漏れ」はエアコン性能の致命傷
冷媒は高温・高圧時には80℃ 3.2MPa、低温・低圧時には10℃ 0.9MPaとなり、かなり高い圧力でパイプ内を循環しています。
この冷媒が漏れると、内部の圧力が下がってエアコンの性能が悪くなり、冷風や温風が出なくなってしまいます。
冷媒の漏れを防ぐことがエアコンの性能を維持する上で重要です。
エアコンの冷媒の漏れを製造時に確認するため、リークテスト(漏れ検査)が必要不可欠です。また設置の際には冷媒が通る経路に空気や水分が大敵。空気や水分が冷却性能、暖房性能を大きく低下させるため、真空ポンプで室内機の冷媒が通る経路を真空に排気してから、冷媒を室内機に注入します。
この時に併せて、施工した配管に漏れがない事を確認するビルドアップテストという漏れ検査を行なっています。
用語解説
冷媒
エアコンの室内機と室外機を循環するガスの事です。圧縮や膨張を行なうために化学変化しにくい性質が求められます。最新のエアコンの冷媒はオゾン破壊係数ゼロ、従来のR410Aと比較して地球温暖化係数を1/3にしたR32が用いられています。
MPa
メガパスカルと読みます。圧力の単位[Pa](パスカル)に106を意味するMを付けたものです。1気圧が0.1MPaなので、3.2MPaは32気圧、0.9MPaは9気圧という事になります。
*1出典) 経済産業省. 第2回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ.
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/air_denki/002.html