真空の原理と原則 4|CVD・プラズマCVD(化学的気相成長)|真空という世界の小さなコラム|HOW TO|ULVAC SHOWCASE

真空という世界の小さなコラム

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ここでは、真空が繰りなす原理原則についてまとめています。
いよいよCVDについての説明になります。CVDは、CDとDVDが合わさったような3文字ですが、もちろんそれとは全然関係ありません。
さあ、最後まで張り切っていきましょう。

CVDとは?

CVDは Chemical Vapor Deposition の頭文字を取った言葉になります。
chemical(ケミカル)は化学、vapor(ベーパー)は蒸気や気化ガス、deposition(デポジション)は付着(沈着) のことをそれぞれ意味していて、日本語では「化学気相成長」や「化学気相蒸着」、「化学蒸着」などといいます。

ここでちょっとおさらいです。
これまでに真空を利用して基板に薄膜を形成させる方法として、「蒸着(厳密には物理蒸着)」「スタッパリング」を説明しましたね。これらはどちらも、固体の材料を蒸発・原子化させて付着させているので、PVD(Physical Vapor Deposition 物理気相成長)という方法になります。

これに対して、CVD(化学気相成長)は原料にもともとガス状の分子を使うことが特徴です。基板や基材が置かれた容器内に原料のガス(※1)とキャリアガス(※2)を供給し、そこに分解・反応させるためのエネルギー(熱、プラズマ、光など)を与えて化学反応させることで薄膜させる方法なのです。

一般的なのが化学反応させるエネルギーに熱を用いた「熱CVD」で、エネルギーごとに「プラズマCVD」や「光CVD」などと分類します。


※1 原料のガスは、ソースガスともいい、コーティングしたい元素を含む気化させた化合物です。シラン(SiH4)、六フッ化タングステン(WF6)などがあります。

※2 キャリアガスとは、原料のガスと一緒に基板表面に送り込むガスのことです。容器の中で原料ガスを均一に拡散させる役割を果たしています。水素(H)、窒素(N)、アルゴン(Ar)などが用いられています。

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CVDの特徴

CVDは原料がガス状分子で万遍なく広がり、化学反応によってしっかり表面に付着させるため、凹凸のある基板でもより均一で密着した薄膜を形成することが可能です。
薄膜ができる速度が速く、処理できる面積も広いため、量産性に優れるといったメリットもあります。

しかし一方で、一番利用されている熱CVDはその名のとおり高温(1000℃近く)で反応させなくてはならない方法なので、高温で反応しないガスは使えません。熱に弱い基盤(プラスチックなど)も変形してしまう危険があるのでやっぱり使えません。

すごい方法のようでも良し悪しがあるので、原料や基板の特徴をしっかり理解した上で、PVDなどと使い分けることが大事と言えそうです。

そこでプラズマCVDが登場

しかしCVDの方法は、「熱CVD」だけではありません。先ほどちらりと触れましたが「プラズマCVD」というものがあるのです。

プラズマCVDは、原料のガスをプラズマ状態に分解して、活性した状態で化学反応を行わせる方法です。その特殊な方法により、室温~600℃程度の温度で、熱CVDと同じくらいの品質で薄膜ができてしまうのです。

プラズマCVDの特徴はまだあります。原料をプラズマ化して種類や組成比などを変化させることで、薄膜させる膜の特性(屈折率や応力、絶縁性など)を制御することができているのです。

とはいえプラズマCVDにも短所はあります。 基板やコーティング表面がイオンのダメージを受けやすかったり、減圧下で行う作業なので原料ガスの利用効率が若干低くなります。条件が悪いとプラズマも発生させにくくなり、制御も複雑になります。

真空状態という特別な環境を活用して、様々な技術が活躍しています。

どんなことに使われているの?

用途として電子機器や半導体デバイスの生産に多く利用されています。

  • 液晶など表示デバイスの絶縁膜
  • 太陽電池のアモルファスSi半導体
  • 半導体デバイスの絶縁膜
  • LEDなどの発光素子のGaAsなど化合物半導体膜
  • 耐熱性容器や部品のコーティングに用いられるSiC、Si3N4、AIN、PBN、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの膜
  • CNT(カーボンナノチューブ)膜

用途として電子機器や半導体デバイスの生産に多く利用されています

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