Technology
水晶発振式成膜コントローラ・有機材料向け4MHz水晶板の開発
概要
有機材料の蒸着には、モニタとしてQCMが一般に使われているが、これらのセンサーには5MHzまたは6MHzの水晶板が用いられている。ところが、有機膜は金属や酸化膜と異なりセンサーに膜がつくとレート変動が大きくなり水晶板の使える寿命が極端に短いという問題が起こった。
本内容では、水晶板の基本周波数をいくつか変え有機膜が付いた時の電気特性と温度特性を測定した。この結果、5MHz、6MHz より、4MHz以下の水晶板の方が有機材料の蒸着には適していることを見出した。
はじめに
水晶板をセンサーとしたQCM(Quartz Crystal Microbalance)法は、比較的容易に極僅かな質量変化を検出できる方法である。気相だけではなく液相における測定も可能なため、ガスセンサー、膜厚センサー、粘度センサー、化学センサーやDNA・タンパク質などの生体物質の相互作用を測定するバイオセンサー等と幅広く利用されている。
従来、QCMを原理とした蒸着モニタには5MHzまたは6MHzの水晶板が広く一般的に使われてきた。有機ELを作る工程において有機材料のレートのモニタにもQCMを原理とした蒸着モニタが使われている。ところが、有機材料の場合、金属材料や酸化材料と異なり、センサーである水晶板に僅かに膜がついただけで測定しているレートの変動が大きくなり、水晶板を頻繁に交換する必要がある。
本報告では、その原因を調べるためセンサーである水晶板の基本周波数を変えて、有機材料を付け、その電気特性である等価抵抗と半値周波数幅さらに、温度特性とサーマルショックによる周波数変化を測定した。
CRTM-9200
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測定条件
有機膜には代表的な Alq3を用い、成膜装置にはSATELLA(UVAC)を用いた。 水晶板は4MHz、5MHzはAT-CUT外形寸法12.4φ(ULVAC)を6MHzはAT-CUT外形寸法14φ(ULVAC)を用いた 膜厚モニタにはCRTM-9200(ULVAC)を用いた。
サーマルショックの測定は、30Wハロゲンランプを用い、温度特性の測定はペルチェ式の温調器を用いた。 電気特性の測定にはNETWORK ANALYZER R3754A(ADVANTEST)を用いた。
結果
基本波周波数4、5、6MHzの水晶板に有機膜が60μm付いたときの等価抵抗R1、半値周波数幅さΔFwをNETWORK ANALYZERで測定したものが図1、図2である。
<図1>
有機膜約60μmの膜が付いた時の水晶板の基本周波数と等価抵抗R1の関係
<図2>
有機膜約60μmの膜が付いた時の水晶板の基本周波数とΔFwの関係
図3、図4はそれぞれ有機膜が60μmついたときの各基本周波数の温度特性、熱衝撃による周波数変化の図である。
<図3>
有機膜約60μmの膜が付いた時の温度特性
<図4>
有機膜約60μmの膜が付いた時のサーマルショックによる周波数変化
水晶板に膜が付いた時の等価抵抗は小さい方が良い、また半値幅周波数も小さい方が良い このため、基本周波数が6、5MHzの水晶板より基本周波数が4MHz以下の水晶板の方が有機膜のモニターには有利であることが分かる。 また、熱衝撃による周波数変化と温度特性も基本周波数が6、5MHzの水晶板より基本周波数が4MHz以下の水晶板の方が優れた特性という結果となった。
従来、QCMの膜厚計には長年5MHz、6MHzの水晶板が広く使われてきたが、有機膜の測定には周波数の低い4MHz以下の水晶板の方がレートの安定性、寿命、温度特性の点で優れていることが分かった。
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